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「中小企業代金支払保障条例」(2025年改正)の実務に対する解読 ――在中国日系企業への影響、日本の下請法の制度との比較

2025-05-07/ 弁護士コラム/

弁護士 張 国棟

弁護士 楊 _

 

要旨 国務院2025317改正後「中小企業代金支払保障条例」(以下「新条例」という。)公布した。同条例は202561から施行される今回の改正中小企業「回収期間長期化・回収難化という問題を焦点として支払義務に対する拘束強化され、違法責任認定細分化されており、その趣旨は中小企業商取引環境の合理に置かれている。中国において経営活動を展開する企業にとって新「条例」に対する理解とコンプライアンス上の調整は、極めて重要である本稿においては日本「下請代金支払遅延等防止法」(以下「下請法」という。)制度下におけるご経験に照らしながら中国たな法規に対する解読対比を行い、これを企業の方々の実務上のご参考の用途にする

 

一、 新「条例」公布背景政策の方向

 

中国経済構造において中小企業有率が雇用への貢献度も高く、イノベーション能力も高いしかし、長期にわたって大企業国有企業等が取引における優越的な地位を占めていることから、中小企業契約行や代金の支払の面において頻繁に制を受けており、回収期間は比較的にく、回収上の難度は高い。国家発展改革委員会のデータによると、2023度の中小企業売掛金規模人民元60超過しており、資金通と経営安全性に深刻な影響がもたらされている

中小企業商取引環境の着改善に向けて国務院2020に同条例(番号:国務院令第728号)を初めて制定した。2025の今回の改正の狙いは、より強制的かつ規範的な拘束手段を通じた受給時支払(Pay-When-Paid)条項明確禁止非現金決済方法制限、全国統一通報プラットフォーム確立などに置かれており、中国国内企業契約管理サプライチェーンコンプライアンスへのより要求提起されている

 

二、 新「条例」における核心的な改正の概要

 

(一) 支払規則の再構築強行規定の拘束下におけるコンプライアンス上のレッドライン

1. 支払期限受給時支払(Pay-When-Paid)条項禁止 

規則要点「条例」第九条)

国家機関公的機関30日以内に代金支払わなければならず、これを契約に規定する場合には、支払期限は最長でも60超過することができない

大手企業は貨物・工事・サービスの引渡日から60日以内に代金を支払わなければならず、これを契約に規定する場合には、支払期限は業界内の規範または取引上の慣習に適合していなければならない。

「第三者から支払われる代金の領収」または「第三者代金支払進捗」支払条件とする取決めは、明確禁止されている

上記の規定により従前の「契約取決め優先するという柔軟の余地が消失し、中小企業の劣位に対する的な保護傾向体現されているここで注意しなければならないのは、たとえより代金支払期限契約決められていたとしても、それは法規の強行規定対抗することできず、契約自由必ず合法性の枠組みにおいて行使されなければならないことが強調されている、という点である。

法律の整合:最高人民法院2024827の回答番号:202411号)

貨物またはサービスを調達する過程において第三者から支払われる金額の領収を代金支払前提とするよう中小企業決めた場合には、その「中小企業代金支保障条例」規定に違反していることから、人民法院民法典第一百五十三条第一項の規定に基づいてこのように規定された条項無効化を認定しなければならない。

契約の定める条項無効化の認定後人民法院は、案件具体的な状況に基づいて業界内の規範双方の当事者取引上の慣習を踏まえた上で大手企業代金支払期限応の違約責任合理的に確定しなければならない。双方の当事者は滞納代金利息計算・支払基準に対する取決めを行っている場合には、取決めに従って処理し、取決め違法であり、または取決めを行っていなかった場合には、全国銀行間資金調達センター開する一年物ローンプライムレートに従って算する。期限超過いに対する補償契約の代金に既に含まれていたことを理として大手企業違約責任軽減要求した場合において、を経て抗弁理由成立したときは、人民法院はこれを支持することができる

 

2. 非現金決済に対する制限(「条例」第十一条)

国家機関公的機関大手企業商業手形・売掛金電子証憑等の非現金決済の方法使用して代金中小企業支払場合には、契約において明確かつ合理的取決めを行わなければならず、商業手形・売掛金電子証憑等の非現金決済方法の受入れを中小企業強制することできず、かつ、商業手形・売掛金電子証憑等の非現金決済の方法利用して代金支払期限実質的延長することできない。

 

3. 係争中の代金分離的な支払(「条例」第十五条)

局部的な争議により全体的な代金支払の遅延がもたらされる事態を回避するために、新「条例」においては次のような条項が追加されている。

「国家機関公的機関大手企業中小企業との間における取引において、争議部分的には存在しているものの、その他の部分履行影響を及ぼさない場合には、争議に係らない部分については、速やか代金支払義務履行しなければならない」

実務の取扱上、契約締結の時点においては目ごとの検収代金支払に関する条項(例えば工事進捗に従っ段階ごとの支払など明確にすることができる。係争中の部分については、これを仲裁または訴訟を通じて解決することができるが、紛争に関わらない代金支払影響を及ぼすことできない。

 

(二)監督管理強度の引上げ:信用懲戒過的責任追及

1. 全国信用動懲戒(「条例」第二十六条)

企業もしも限のとおりに代金支払わなかった場合には、全国信用情報共プラットフォーム記録され、社会公示される重大用失墜リストに組み入れられた企業を対象としては、市場への参入制限され、政府調達融資・優良企業査定などの活動への加も制限される。国家機関公的機関を対象としては、公務における消費や事務所の使用など制限され、一件の違法行為により所々における制限がもたらされるという連的な体系が形成される

 

2. 二重処罰、個人的責任追及の仕組み「条例」第三十三条第三十五条)

国有大手企業:政府調達プロジェクトにおいて、もしも財政資金の支払が遅延した場合には、支払責任者明確しなければならず、責任の転嫁が厳格に止されており、滞納により望ましくない結果がもたらされた場合には、管理者に対する処分が行われる。また、国有企業の場合には、より厳重かつ全面的な監督管理範囲に組み入れられ、その調達代金支払義務別な免除を受けない

報復攻撃の禁止:通報企業に対する脅迫または報復実施した場合には、その直接責任者刑事責任及されるおそれがある

二重処罰:規律に違反して受給時支払(Pay-When-Paid)条項決め企業が、人民元1050万元の過料に処せられるとともに、その直接責任者も、人民元110万元の過料にせられる

 

3. 通報制度の明確「条例」第二十五条)

中小企業権益保護ルートの円滑性を保障するために、新「条例」においては通報処理の仕組みが完全化されて通報用のプラットフォーム設立され、これに関わる期限が明確にされている。通報受理部門は正式受理日から10営業日以内に手続に従って通報案件を通報処理部門に転送しなければならない通報処理部門は30日以内に処理結果書面をもって通報者フィードバックしなければならない。状況雑であり、またはその他の特別な原因があった場合には、処理期限最長でも90超過することができない。また、通報受理部門、通報処理部門、通報者、被通報者などの各主体権利義務明確にされている

 

三、 日本「下請法」の概要、日中間における制度比較

 

(一)日本「下請法」の概要

日本においては1956「下請代金支払遅延等防止法」が既に制定されており、その趣旨は中小下請企業取引における権利保護、および大企業による優越的な地位濫用防止に置かれている。同法は幾度にもわたる改正を経ており、直回の改正2009に行われている。「下請法」独占禁止法特別法として独占禁止の観点から制定されており、その趣旨は日本の全ての大手企業による優越的な地位濫用した中小企業利益の抑圧と侵害に対する制限に置かれている

えば、産自動車2021年から2023までのコスト削減」を理とし、規律違反して36社のアウトソーシング企業の日本円30円にのぼる代金の上前をはねていたことから20243日本公正取引委員会によって下請法第6に従った代金返還と是正が命ぜられている(同条の文言は以下のとおり:「発注者は一方的な理由をもって代金の利ざやを獲得し、または代金の支払遅延することができない違反者代金および滞納利息返還責任負担しなければならない。市場における地位濫用した支払遅延行為に及ぶ大手企業を対象とする立法の面からの抑止を通じた強硬的ではない監督管理業界内の自律」という特色を帯びた制度的な枠組みが、日本においては形成されている

制度上の要点には次のものが含まれている。

1. 支払期限強制原則として大企業貨物の引渡またはサービスの完成日から60日以内に代金支払なければならない。)

2. 不当な値下げや返品の強制などの行為明確禁止下請企業の価格をめぐる交渉と貨物・工事・サービスの引渡しにおける権利保護

3. 後続の監督管理紛争処理に便宜を図るための書面の契約代金支払記録保存要な企業への要求

4. 公正取引委員会主管機関とす行政処分権の具備(命令、課徴金徴収、公示などを含む。)

5. 規律に違反した企業に対する「名誉懲戒」実施違反企業リスト定期的

 

(二) 日中間における制度比較:取扱上の差異コンプライアンス面における示唆

比較要素

中国新「条例」

日本「下請法」

立法性質

行政法規(国務院令)

独占禁止法特別法

適用範囲

大手企業国家機関公的機関中小企業との取引

大手企業中小下請企業

支払期限

国家機関公的機関30最長でも60超過しない。大手企業60契約取決め業界内の規範または取引上の慣習に適合ていなければならない

発注者請負人において検査または検収期限決められていたのか否かにかかわらず発注者は一律に必ず請負人の貨物・工事・サービスの引渡日から60以内(ひいてはより期限)に代金支払完成しなければならない(第22

代金支払

方法

商業手形・売掛金電子証憑等の非現金決済の方法の受入れを中小企業強制することができず、かつ、商業手形・売掛金電子証憑等の非現金決済の方法利用して代金支払期限実質的延長することできない

「下請法」においては代金支払方法に対するあまりくの制限規定は設けられておらず、ただ「満後に現金化が困難な手形」という代金支払方法使用の禁止という制限のみが規定されている(第4条)

滞納利息

取決めがある場合には、それに従う。取決め違法であり、または取決めがなかった場合には、全国銀行間資金調達センター開する一年物ローンプライムレートに従って利息を計算する

「下請法」においても期限超過後の利息同様規定されている(第42。ただし、契約取決めが行われていた場合における取扱方法に対する限定は行われておらず、ただ公正取引委員会規則の規する利率に従っ遅延利息支払のみが要求されている

親会社

責任

明確にされていない。ただし、関連当事者取引審を通じて責任追及することができる

親会社子会社支払行為に対する監督責任を負担する(第4条)

監督管理

モデル

行政主導:

信用懲戒市場参入制限

業界内の自律:公正取引委員会からの勧公開的なけん市場参入制限定されておらず、懲戒の強は比較的に低い

 

示唆中国新「条例」における支払義務に対する拘束は、より強制的であり、行政上の干渉と信用懲戒が、より強調されている。一方、日本制度制度常態化透明性行政上の独的な監督が、より重視されている。在中国日系企業コンプライアンス重心事後の対応から事前のリスクマネジメントに移行させなければならない

 

四、 在中国日系企業の方々へのコンプライアンス上のご提案 

 

(一)中小企業の方々へのご提案       

中小企業その他の企業または組織契約締結するに当たっては、らの企業規模類型体的かつ明確に相手方に告知しなければならず、その開示方法については、契約条項において明確取決めを行うことを優先的に択し、証拠の据置きを遂行されるようお勧めする

契約締結の過程においては、新「条例」支払期限、支払方法、支払条件、違約責任などの面における規定に従って契約中に詳細取決めを行うことができる

もしも国家機関公的機関大手企業による代金支払または遅延状況に遭遇した場合には、代金滞納組織との積極的な意思疎通や議を通じて解決を図るほか、新「条例」において付与されている権利を活用して権益保護を行い、らの合法的権益合理的かつ合法的に保障することができる

 

(二)大手企業の方々へのご提案       

契約条項を改めてし、受給時支払(Pay-When-Paid)条項を削除する。段階ごとの代金支払条件明確にし、支払条項30/60日」規定に違反しないよう確保する 

代金支払台帳と工程記録制度を確立し、サプライチェーン契約の法令遵守を定期的に検証する。これにより監督管理上の出検への対応または争議における挙証に便宜を図る 

企業信用情報を重視し、代金の滞納によりブラックリストに組み入れられ、融資または政府業務影響が及ぶ事態を回避する 

法務コンプライアンス窓口置して通報速やかに処理し、通報の受理日から30日以内に書面の回答を提出し、信用記録への悪影響を回避する

新「条例」19を踏まえて大手企業中小企業代金支払保障業務の状況企業リスクマネジメント・コンプライアンス管理体系に組み入れ代金中小企業への速やか支払を自社の完全子会社または子会社督促し、中国子会社支払行為に対する監査制度確立して連帯責任負担のリスク回避しなければならない。

 

五、 まとめ

 

中国におけるたな「中小企業代金支払保障条例」実施により、制度において手企業・中堅企業による契約義務のより公平履行進され、法治化された商取引環境が構築される。新「条例」日本下請法との核心的な差異は、中国の場合には「行政的な強制」をもって支払遅延の局面が打開されるのに対し、日本の場合には「業界内の自治」に強く依存している、という点にある在中国日系企業としては、中国におけるコンプライアンス上の要求契約に組み込まなければならない。さらに、日本サプライチェーンにおける長期的な調的行動という理念(例えば下請法の趣旨である「公正取引」の確保などに鑑み本国「下請法」の下におけるコンプライアンス上の経験をもとに、部制度調整リスク価を可能な限り早期に展開し、これにより経営の法令遵守の穏健性、およびリスクの制御可能性を確保し、効率と法令遵守を両立させる支払管理体系を構築しなければならない将来的には日中両国の経済貿易規則の相互作用と化に伴い、企業コンプライアンスは両制度的な枠組みにおいて的な均衡化が図られなければならない

 

 

 

関連リンク

1. 「中小企業代金支払保障条例」(国務院令第802号,2025年)https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202503/content_7015405.htm 

2. 最高人民法院「大手企業中小企業決め第三者から支払われる代金の領収を代金支払前提とする条項効力問題に関する回答」(法20248号)http://gongbao.court.gov.cn/Details/a56bf04193752b0ae2dd77152dbeb3.html 

3. 下請代金支払遅延等防止法 - 日本語/英語 - 日本法令外国語訳DBシステム

https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/3763#je_at12

4. 日産自動車株式会社に対する勧告について-JFTC202437日)

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/mar/240307_nissan.pdf

 

(終)

 


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