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中国の輸出管理法の解説 ――Q&Aシリーズその二:中国における輸出管理の基礎知識 (後編)

2025-06-30/ 弁護士コラム/

弁護士 焦 陽

 

経済のグローバルが進む今日において、越境貿易外商投資世界経済増長進し、資源の合理的な分を促進する上での重要な原動力となっているその一方で、国際的な安全環境の段階的な雑化に伴い、国家安全経済利益外交政策国際的義務の間における均衡を図るための肝要な手段として輸出に対する管理各国型の国際経済貿規則を制定する上での核心的な議題のうちのつとして取り上げられている2020121「中華人民共和国輸出管理法」(以下「輸出管理法」という正式実施以降、「中華人民共和国デュアルユース品目輸出管理条例」(以下「デュアルユース品目輸出管理条例」というの重要な関連法規の公布と実施に伴い、中国においては「輸出管理法」核心とする輸出管理の面における法体系形成されており、中国輸出管理統一化体系化たな段階に入っている。中国との貿易に従事される企業と対中投資に従事されている方々にとって、中国輸出管理の面における法体系に対するい理は、戦的な意思決定、リスク管理およびコンプライアンス経営実現を行われる上での「必修課となっている

シリーズにおいては質疑応答の形式をもって実務の観点から中国輸出管理の面における法体系に対する解析を行う初回の本稿においては当該体系における各業務に責任を負う政府機関義務主体管理品目・対象行為(これらの四項目は前号にて掲載)や、管理政策法的責任(これらの二項目は本号にて掲載)などの基礎的な問題に焦点が当てられている。輸出管理上のコンプライアンス体系の構築、リスクなどのテーマをめぐる後続の掘り下げた検討のための基礎を固めるとともに、本稿が中国における輸出管理上の基礎的な知識を容易にご理解いただく上での一助となれば幸いである。

 

Q5中国にはどのような管理政策があるのか

A5

1)    事業者の資格に基づ管理

「輸出管理法」第十一条規定によると、輸出業者管理品目輸出従事する場合において、管理品目に関わる輸出経営資格法により取得しなければならないときは、相応の資格取得しなければならない。品目経営資格管理制度具体的には次のとおりとなっている。

ž   デュアルユース品目:「デュアルユース品目輸出管理条例」実施前においては、輸出業者デュアルユース品目輸出する場合には輸出経営登記を先に完成しなければならなかった。一方、「デュアルユース品目輸出管理条例」の実施後においては、この登記手続は既にされており、輸出業者所定の手続に従って輸出許可直接申請することができるようになっている

ž   軍需品:中国においては軍需品輸出の独占的経営制度実施されている。軍需品輸出従事する事業者軍需品輸出独占的経営資格を取得し、許可された経営範囲において軍需品輸出経営活動従事しなければならない

ž   核:輸出国務院指定する組織がこれを独占的に取り扱うとされ、それ以外の組織または個人はこれを経営することができない。

ž   監視化学品:国務院化学工業主管部門が国務院対外経済貿易主管部門と共同で指定する組織(以下被指定組織というは、第一類監視化学品第二類第三類監視化学品およびその技術専用設備輸出業務従事することができる第一類監視化学品第二類第三類監視化学品およびその技術専用設備輸入または輸出する必要がある場合には、その輸入輸出の代行を被指定組織委託しなければならない。被指定組織以外の組織または個人は、いずれもこのような輸出業務には従事することできない。

2)    許可制の対象となる輸出行為と、品目に基づ管理:管理リスト、臨時的管理品目包括条項

中国においては管理品目輸出に対する許可制度実施されている輸出業者管理リストに記載されている管理品目、臨時的管理品目または包括条項の対象となる品目輸出する場合には、国家輸出管制管理部門許可取得しなければならない

a)       管理リスト

「輸出管理法」第九条第一項の規定によると、国家輸出管制管理部門は同とこれに係る法律・行政法規規定の下、輸出管理政策に基づき、所定の手続に従って関連政府機関と共同で管理品目輸出管理リスト制定調整し、これを速やかに公開する

管理リストにはデュアルユース品目、軍需品、核および包括条項の対象となりうる他の一部の管理品目まれている。現行の各種品目輸出管理リスト具体的には次のとおりとなっている。

ž   デュアルユース品目:「中華人民共和国デュアルユース品目輸出管理リスト」(番号:商務部公告2024年第51号)

ž   軍需品:「軍需品輸出管理リスト」(番号:科工法〔2002828号)

ž   核:「核輸出管理リスト」(番号:国家原子機構、商務部、外交部、関総署公告第2018年第1号)

ž   監視化学品:「各種監視化学品録」(番号:中華人民共和国工業和信息化部令第52号)

b)       臨時的な管理

「輸出管理法」第九条第二項の規定によると、国家安全と利益保護および拡散防止の国際的な義務履行の必要性に応じ、国務院の承認または国務院中央軍事委員会の承認を経た場合には、国家輸出管制管理部門輸出管理リスト掲載項目以外貨物・技術・サービスに対する臨時的な管理実施し、これを公告することができる。臨時的管理管理リストに対する重要な補完であり、その実施期限二年超過することができない。臨時的管理実施期限の満了国家輸出管制管理部門評価を速やかに行い、評価結果に基づいて①臨時的管理すのか、②臨時的管理延長するのか、それとも③臨時的管理品目輸出管理リスト入れるのかを決定しなければならない。

c)       包括条項

「輸出管理法」第十二条第三項規定によると、輸出管理リスト挙されている管理品目臨時的管理品目貨物・技術・サービスについて、それらの貨物・技術・サービス以下リスク存在していおそれがあることをり得ているとき、もしくは知り得べかりしとき、またはこれに関する通知国家輸出管制管理部門から受けときは、輸出業者許可国家輸出管制管理部門申請しなければならない(一)国家安全または利益への脅威 (二)大量破壊兵器およびその運搬手段設計・開発・生産・使用への利用 (三)テロリズムの目的への利用この条項包括条項に属しており、これは管理リスト臨時的管理品目に存在している可能性ある限に対する補完であるとともに、管理範囲不確定性極めて大き増加させており、その「知または知り得べかりしとき「通知を受けたとき適用によって輸出業者の遵法意識と遵法能力が求められるこのような不確定性を引き下げるために、もしも輸出が予定されている貨物技術サービス等の管理品目への属否を輸出業者確定することできない場合には、輸出業者はこの点をめぐる照会国家輸出管制管理部門提起することができる「輸出管理法」第十二条第四項の規定によると国家輸出管制管理部門はこのような照会速やかに回答しなければならない。

3)    特定主体用途に基づ管理:エンドユーザーエンドユースに対する管理、管理リスト

a)       エンドユーザーエンドユースに対する管理

「輸出管理法」第十五条第十六条規定によると輸出業者管理品目エンドユーザーエンドユースに関する証明文を国家輸出管制管理部門提出しなければならない。また、管理品目エンドユーザー国家輸出管制管理部門許可を経ずに管理品目エンドユースみだりに変更することができず、かつ、これをいずれの第三者にも譲渡することができないことに関する確約も行わなければならない。このほか、エンドユーザーエンドユースに対する管理化を目的として国家輸出管制管理部門管理品目エンドユーザーエンドユースリスク管理制度確立しており、管理品目エンドユーザーエンドユースに対する評価検証を行っている

「デュアルユース品目輸出管理条例」においては「要注意リスト」も更に創設されている商務主管部門はデュアルユース品目エンドユーザーエンドユースに対する検証法により展開し、これに関わる組織個人はこれに協力しなければならない。輸入業者エンドユーザーが所定の期限検証協力せず、または証明提供せずに、デュアルユース品目エンドユーザーエンドユースを確認することできない事態がもたらされた場合には、国務院商務主管部門はこのような輸入業者エンドユーザー要注意リストに組み入れることができる。要注意リストに組み入れられ輸入業者エンドユーザー輸出業者との間におけるデュアルユース品目輸出取引依然として展開することはできるがこれに関わる輸出許可申請等へのより厳要求が課せられこととなるすなわち、輸出業者はただ個別許可しか申請することができなくなり、さらには要注意リストに組み入れられている輸入業者エンドユーザーを対象とするリスク評価報告書を提供しなければならず、かつ、輸出管理法令関連要求遵守に関する確約も行わなければならなくなる。)。

b)       管理リスト

「輸出管理法」第十八条第一項第二項規定によると、国家輸出管制管理部門次の各号に掲げる状況に該当する輸入業者エンドユーザーを対象とする管理リスト確立する。(一)エンドユーザーまたはエンドユースに対する管理上の要求に違反したとき。(二)国家安全または利益を脅かすおそれがったとき。(三)管理品目をテロリズムの目的に用いたとき。管理リストに組み入れられた輸入業者エンドユーザーに対しては、国家輸出管制管理部門はこれに関わる管理品目をめぐる取引禁止制限管理品目輸出中止の命令などの必要措置採択することができる。また、「デュアルユース品目輸出管理条例」に追加された規制によると、(一)大量破壊兵器およびその運搬手段設計・開発・生産・使用へのデュアルユース品目利用、または(二)国関連政府機関によるこれに係る取引提携の禁止制限措置法によ採択状況に該当し、中国における国家安全または利益を脅かした輸入業者エンドユーザーも、管理リストに組み入れられるおそれがある。管理リスト具体的品目に関わっておらず、輸入業者エンドユーザー対象としており、取引主体から理が展開されている。輸出業者原則として管理リストに組み入れられている輸入業者またはエンドユーザーとの取引を行うことができない。輸出業者特別な状況下において管理リストに組み入れられている輸入業者またはエンドユーザーとの取引の実施がかに必要となった場合には、これに関する申請を国家輸出管制管理部門提起することができる。

このほか、中国においては輸出管理上、現時点国別リストはまだ制定されていないが、「輸出管理法」第八条規定によると、国家輸出管制管理部門管理品目輸出先の国家地区に対する評価を行った上でリスク確定し、相応の管理措置採択することができる。このため、将来的には上述の条項に基づく国別リスト中国において制定および公開される可能性排除することができない

 

Q6中国輸出管理に関する規定に違反した場合の法的責任としてはどのようなものがあるのか

A6

1)    行政責任

「輸出管理法」においては異なる類型違法行為に対する詳細行政処罰規定されており、よく受けられる警告発出違法行為停止命令違法所得没収、および過料の徴収のほか、一部の行為情状が深刻な場合においては、業務停止と是正がぜられ、ひいては管理品目輸出に関する経営資格取り消される。具体的には下表をご参照いただきたい(異なる品目を対象として各関連法規においてはその他の別段の行政罰則が規定されている可能性ある)。

違反主体

違反行為

処罰措置

輸出業者

いずれかの管理品目輸出経営資格取得せずに当該管理品目輸出従事したとき。

ž 警告の発出違法行為停止の命令違法所得の没収

ž 違法な売上高が人民元五十万元以上に上っていた場合における違法な売上高の五倍以上十倍以下の過料の併科

ž 違法な売上高がなく、または違法な売上高が人民元五十万元未満であった場合における人民元五十万元以上五百万元以下の過料の併科

次の各号に掲げる行為に及んだとき。

(一)許可を経ずに管理品目みだりに輸出したとき。

(二)輸出許可証書規定する許可範囲を超えて管理品目輸出したとき。

(三)輸出禁止されている管理品目輸出したとき。

ž 違法行為停止の命令違法所得の没収

ž 違法な売上高が人民元五十万元以上に上っていた場合における違法な売上高の五倍以上十倍以下の過料の併科

ž 違法な売上高がなく、または違法な売上高が人民元五十万元未満であった場合における人民元五十万元以上五百万元以下の過料の併科

ž 情状が深刻な場合における業務停止・是正の命令ひいては管理品目の輸出経営資格の取消し

欺まん、賄賂などの不正な手段をもって管理品目輸出許可証書取得し、または管理品目輸出許可証書違法に譲渡したとき。

ž 許可の取消し、輸出許可証の没収、違法所得の没収

ž 違法な売上高が人民元二十万元以上に上っていた場合における違法な売上高の五倍以上十倍以下の過料の併科

ž 違法な売上高がなく、または違法な売上高が人民元二十万元未満であった場合における人民元二十万元以上二百万元以下の過料の併科

「輸出管理法」規定に違反して管理リストに組み入れられている輸入業者またはエンドユーザーとの取引を行ったとき。

ž 警告の発出違法行為停止の命令違法所得の没収

ž 違法な売上高が人民元五十万元以上に上っていた場合における違法な売上高十倍以上二十倍以下の過料の併科

ž 違法な売上高がなく、または違法な売上高が人民元五十万元未満であった場合における人民元五十万元以上五百万元以下の過料の併科

ž 情状が深刻な場合における業務停止・是正の命令ひいては管理品目の輸出経営資格の取消し

監督またはまたは妨害したとき。

ž 警告の発出人民元十万元以上三十万元以下の過料併科

ž 情状が深刻な場合における業務停止・是正の命令ひいては管理品目の輸出経営資格の取消し

主体

限定なし

管理品目輸出許可証書偽造、変造しまたは売買したとき。

ž 違法所得の没収

ž 違法な売上高が人民元五万元以上に上っていた場合における違法な売上高の五倍以上十倍以下の過料の併科

ž 違法な売上高がなく、または違法な売上高が人民元五万元未満であった場合における人民元五万元以上五十万元以下の過料の併科

第三者サービス提供者

輸出業者輸出管理の面における違法行為従事していることを明らかに知り得ている場合において、依然として代理、貨物輸送、郵送、通関申告、第三者電子商取引プラットフォーム金融などのサービスを当該輸出業者提供したとき。

ž 警告の発出違法行為停止の命令違法所得の没収

ž 違法な売上高が人民元十万元以上に上っていた場合における違法な売上高三倍以上五倍以下の過料の併科

ž 違法な売上高がなく、または違法な売上高が人民元十万元未満であった場合における人民元十万元以上五十万元以下の過料の併科

 

このほか、「輸出管理法」規定に違反して処罰を受けた輸出業者を対象としては、処罰決定の発効日をもって国家輸出管制管理部門五年においては当該輸出業者から提起される輸出許可申請受理せず、これに係る違法性の状況を信用記録に組み入れることができる。さらに、輸出業者の事業場において処罰を受けた行為への直接責任を負っていた主管その他直接責任を対象としては、国家輸出管制管理部門五年における輸出経営活動への従事これらの者に禁止することができる。同者は輸出管理の面における違法行為により刑事罰を受けた場合には、終身的に輸出に係る経営活動従事することができなくなる

また、「輸出管理法」第四十三条第一項の規定によると、輸出管制管理に関する規定に違反して国家安全と利益を脅かした場合には、規定に従って処罰が行われるだけではなく、さらにはこれに係る法律・行政法規規定に従っ処理処罰われなければならない。したがって、輸出管制管理に関する規定に違反して国家安全と利益を脅かす行為実施した場合には、「輸出管理法」における行政処罰を受けるほか、「国家安全法」その他の法令の定める相応の処罰にも直面する可能性がある。

2)    刑事責任

「輸出管理法」第四十三条第二項の規定によると、規定に違反して輸出禁止する管理品目輸出しまたは許可を経ずに管理品目輸出た場合には、刑事責任法により追及されるこれらの行為主に関わってい法上の罪名は密輸であり、さらには違法経営罪国家機密漏えい国家機関公文書・証書印章偽造変造売買罪など構成する刑事的なリスク直面するおそれもある


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